Naked Cafe

横田創(小説家)

にしな

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……余談だが、川谷絵音の才能は"普通に"モーツァルトとかプリンスとかと比すべきものだと思うのはわたしだけではないはず。

……にしなの歌を、声を聴きながら思うことは、声は、歌は、例えば、ともだちと四人で檜原村の宿に泊まった翌朝窓を開け放った部屋の中で登山の準備運動をしながら眺めていた落ち葉のひらひらと舞う風とか、同じその山に、まだ登山をし始めてまもない恋人とあした登ることになる広葉樹の下の山道を試しに登り始めたときに包まれていた靄のような霧雨とか、元代々木の丘を越えればかならず新宿の夜景を見れると知りながら登った漫画に出てくるような豪邸の細い坂道とか震災後の蛍光灯を減らされた都営の運動施設のプールをガラス越しに眺められる食堂の薄暗い天井の下のしれっとしたテーブルとか、高速道路の下に放置された公園というわけでもないスペースに設えられたブランコとか、その向かいにある小学校の脇に自生したオニユリの化け物みたいな花の白さとか、近所に緑道があり、春になれば桜の散り際の夜道をふらふら散歩できることとか、1度しか行かなかった沖縄料理のおいしい飲み屋とか、そこに向かうために渡った歩道橋とか、カクヤスが近所にあってよかったこととか、郵便局の本局の中にあるコンビニで立ち読みをした女性誌とか、そのコンビニで働いていた目鼻立ちのはっきりした女性の口元とか、その郵便局がある坂の下のピザハットの肩でなければ押せないくらい重い扉とか、そういうものと比すべきものだと思う。

 

『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』

なぜわたしは「わたし」なのか。この「わたし」でなければならなかったのか。答えのないこの問いに応えるための唯一の方法。それは、あなたでなければならない「あなた」を見つけることだ。代わりがいないことが喜びに変わることが「わたし」たちには必要なのだ。

わたしの代わりなんていくらでもいる。なぜわたしは「わたし」なのかと絶望していた「わたし」が、同じ「わたし」がそう感じている。それは「あなた」の中にいるわたしが「わたし」でなければならない、代わりがいないことを「わたし」たちが求めているからだ。

「代わりがいない」という喜びと悲しみ。「愛している」としか言えないいまとこれから。たとえ宛先に届かなくても宛先がある。「宛先」はある。あなたでなければならない「あなた」がいた。その事実は消えない。そしてその事実は「あなた」ではない「あなた」に届く可能性の中にある。

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『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』公式サイト

 

 

わたしを見つけて

筑摩書房のPR誌『ちくま 6月号 』に「わたしを見つけて」という短編小説を書きました。

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 自分で言うのもなんだけど、わたしはレアキャラだ。渋谷駅という複雑怪奇で巨大な駅の中でわたしを見つけるのは、たぶん難しい。
 ヒントその1。わたしはいつも渋谷駅の改札口のすぐ近くにいる。そう言われてひとが思い出す改札口はJRのハチ公口か。井の頭線の改札口か。そのどちらでもないとだけは言っておく。
 ヒントその2。わたしは渋谷駅で最も高いところにいる。どこまでが駅の構内で、どこからが駅ナカなのかの判断が難しいところか。一応、嘘とか適当なことは言ってないつもり。
 ヒントその3。わたしは二日働いて一日おやすみをするリズムで働いている。わかるひとにはわかるヒントだけど、わからないひとにはなんのヒントにもならないヒント。


ひっぱりたいものをひっぱってる、今この瞬間、のゆにとってはそれがすべてだ。ひっぱりたいという気持ち。その気持ちに従って腕を動かし、手先を動かす力。能力。ひっぱってみたときの快楽。そうしたすべてのものを、のゆは「座った」ことで、手に入れた。新しい動きが新しい感情を。新しい喜びを。新しい表情、声、つまりは新しいことばを、もたらした。

noyurinote.hatenadiary.jp

奇妙な廃墟

表現者の起こした事件が起きるたびに思う。思い知らされる。福田和也の『奇妙な廃墟』という名を与えられた仕事の偉大さを。

 

小説家・横田創×本屋・竹田信弥トークイベント 文芸誌『しししし2号』刊行記念

東京・赤坂にある選書専門店「双子のライオン堂」の竹田信弥さんと文芸誌『しししし2 特集:ドストエフスキー』の刊行(新作発表)記念として来年、1月30日に二子玉川 蔦屋家電トークイベントをします。竹田さんは、この雑誌に掲載された短篇「わたしの娘」の担当編集者でもあります。そのあたりの話もできればと思っています。

store.tsite.jp

わたしの娘

2019年1月25日発売の雑誌『しししし2 特集:ドストエフスキー』に短編小説を書きました。一部書店にて、年内の先行発売も予定しているそうです。この雑誌を編集・発行している東京・赤坂の書店(双子のライオン堂)で、今年の3月29日に行われた文芸評論家の山城むつみさんとわたしの対談も掲載されています。

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http://shishishishi.liondo.jp/

 

母の手首にはケロイドがある。枝豆の竹の籠を模したプラスチック製の丸い容器を引き寄せた左の手首の外側に、見る角度によっては男物の腕時計をしているように見えなくもない傷がある。養子縁組をした妹に血が出るほど、何度も何度も噛まれつづけた痕だ