あらたに別の推薦文を書こうと思ったのだけど、下の(チラシやネット用の)推薦文を書いてから神里雄大(という名の演出家/作家)と会うたび、下に書いたような思いを強くするばかりなので、そのまま転載することにします。
今度の公演で彼がなにをするか、わたしは知りません。おそらく彼も知りません。けど、彼が彼をも含めたすべてのひとびとが演劇としてしてきたことに満足していないどころか今日、ていうかいまさっきしてきた、観てきた稽古に、その帰り道にたまたま目撃したことに、さっき自分が思いついたことに、アフタートークできっとわたしが生き生きと、嬉々として話すことに「いや、……」というつぶやきを彼が差し挟むことだけは確かです。みものです!!!!!!!!!!
かたち、と言ってもいいし、形式、スタイルと言ってもいい。神里雄大は、あるひとつの限界を舞台に与える。もちろんそれはフィクションであり、演出家の思いつきに過ぎないのだけれど、舞台の上で、いまここで演じる俳優のみならず、すでに書かれていたものであるはずの戯曲の言葉でさえも悶え苦しむほどの内的な必然性がそこにはあるのだ。
要するに、神里雄大は意地悪である。もちろんそれ相応の覚悟が彼にはあって、彼の演出はなにものにもおもねらない。普段はへらへら笑って、おもねまくったふりをしているけど、権威のあるものになればなるほど馬鹿にせずにはおれない彼の性向は必然的に権威あるものたち(たとえば、シェークスピア、鈴木忠、坂口安吾、自分を魅了してやまないバーのママ、自分? 英語が堪能なひとたち、当世風のひとたち、ある世代のひとたち、要するに、それっぽいひとたち)へと向かう。けど、殺しはしない、生殺しにする。
そして彼の構成する意志に抵抗してくる様を眺める、安吾の「桜の森の満開の下」の首が大好きなお姫様のように、惜しみなくすべてのものの主体を奪う。わたしはそれを愛と呼ばずにおれないのだけれど。(横田創/作家)
第49回岸田國士戯曲賞受賞作
「三月の5日間」
作:岡田利規(チェルフィッチュ)
構成台本・演出:神里雄大▽2008年7月25日(金)〜7月27日(日) 新百合ヶ丘公演 @ 川崎市アーセンター アルテリオ小劇場
▽2008年8月3日(日)〜8月5日(火) 上野公演 @ お江戸上野広小路亭
出演:冨川純一 西田夏奈子 武谷公雄(バングラッシー) 砂生雅美 佐々木透 宇田川千珠子(青年団) 影山直文
中村早香( ひょっとこ乱舞) 尾原仁士 春日井一平(劇団上田) タカハシカナコ(劇団井手食堂)照明:高橋かおり(Hikari Honpo) 制作:elegirl label 制作協力:野村政之 助手:鈴木啓史 企画制作:岡崎藝術座
▽アフタートークがあります。
7/25(金)19:30 柴幸男氏(青年団/toi)
7/26(土)18:00 横田創氏(作家)
7/27(日)15:00 岡田利規氏(チェルフィッチュ)