Naked Cafe

横田創(小説家)

簡単チリトマトヌードル ……トマト缶のすすめ


すぐにでも作れるものから紹介したいのもあるけど、インスタントのものであっても、ちょっとアレンジを加えるだけでこんなにもおいしく、たのしくなるコツというかノリみたいなものについて書きたいのでひきつづき、ひとりご飯を紹介します。

インスタントの塩ラーメンを使った「簡単チリトマト・ヌードル」です。そうです、あれです。けっこうファンなひとが多い気がするカップヌードルのchili tomatoみたいなラーメンです。じゃあカップヌードルを買えばいいじゃないと言われそうですが、作ることも食べることの一部というか、同じたのしみの中にあると思うので、インスタントじゃなくてペーパーでコーヒーを淹れるくらいのノリで鍋を火にかけて、かるく料理をしてみてください。トマトの酸味がきいていて、見た目よりずっとあっさりしてるので、飲んで帰ったあと小腹がすいたときとかおすすめですよ。写真は1人分のインスタントラーメンを穴熊とふたりで分けて食べたときのものです。



簡単チリトマト・ラーメンの作り方(1人分)
インスタントの塩ラーメン 1袋
トマトの水煮缶のトマト 1個
赤唐辛子 1本
万能ネギ 好きなだけ
煎りゴマ(白) 好きなだけ

 袋に書かれている分量よりちょっとだけ少なめの水を入れて鍋を火にかける。そこへ赤唐辛子を一本そのまま入れて煮る(辛いのが好きなひとは2本でも3本でも)。沸騰したらまな板の上でざく切りにするか手で握りつぶしたトマトの水煮(ホールトマト)を入れて弱火で3分煮込む。
 味を見ながらインスタントラーメンのスープの素を入れてゆく。お好みですが、半分くらい入れればきっとじゅうぶんでしょう。トマトの酸味がスープの素のうまみ成分の代わりに活躍してくれるので全部入れる必要はないはず。味に納得がいったら乾麺を入れて固めに茹でる。
 器にうつして、刻んだ万能ネギと煎りゴマを散らせば完成。

家でトマトソースのパスタを作るか、レシピをちゃんと見ながらインドっぽいカレーを作ったことがあるひととかでなければおそらく買ったことがないであろう「トマトの水煮缶(ホールトマト)」は家に常備しておくことをおすすめします。これからもたびたびこのブログに登場すると思うし。ほんと、いろいろ便利だし、どこのスーパーでも1缶100円から140円くらいで売っているし、なによりわたしは最近のトマトに不満がありました。青い、かたい、水っぽい、そして高い。だから買うのはいつもサラダ用のプチトマトくらいですが、スープやシチューに使うわけにはいかない。で、あるとき思いついたのが、イタリアンでなにかとお世話になっていたトマト缶でした。

トマト缶のトマトは日本のトマトではありません。ポモドーロ[Pomodoro]。ピザやパスタソースに使うイタリアの長細いトマトを使っています。だから日本のメーカーの缶詰である必要はないどころか、イタリア製かスペイン製のトマト缶があればなおさらよしです。缶詰ですから、生野菜よりデキが安定してます。どれを買ってもだいたい赤くて、柔らかくて、濃くて、そして安いです。使わない手はありません。

ラーメンの中にトマト? と思ったひとには少し説明する必要があるかもしれません。中華にはトマトと卵のスープという、どこの中華料理屋さんにもある定番メニューがあります。トマトの酸味とショウガの香りがとってもおいしいスープなのですが、それに麺を入れて、レタスをさっと茹でたチキンスープのトマトラーメンがわたしは好きで、いま高層ビルの中に移転してしまってもう十年以上食べに行ってないのですが、新宿の中央公園と成子坂下のあいだにあった白龍館のトマトタンメンを思い出します。新宿の珈琲屋でバイトをしていたときよく店長に連れて行ってもらっていたのですが、大酒飲みで熊みたいにおおきな体をした店長はかならず豚足も頼んでました。中華料理屋というより定食屋って感じのコンクリートの床で、ひろくて、客が勝手に冷蔵庫から瓶ビールを取って、ひもでぶら下がった栓抜きであけて飲むような店で、厨房のガラスはいつも麺や餃子を茹でるためのおおきな鍋の湯気で曇っていました(ウェブ・サイトを見る限り、その当時の面影は見る影もないようですが、味は変わってないといいなー)。

残りのトマトの水煮はタッパーに入れて冷蔵庫に入れれば五日くらいはもちますが、トマトソースにして保存することをおすすめします。うちではトマトと卵のスープを作るときも、トマトの冷製パスタを作るときもトマトの水煮缶を使います。普通のトマトよりも赤くて柔らかくて、味が濃くて安くておいしいので。