Naked Cafe

横田創(小説家)

大根おろしのっけ納豆チャーハン ……大根おろしがやばめ

きょうのひとり昼ご飯は「簡単チリトマト・ヌードル」を辛ラーメンで作りました。トマトの酸味が韓国料理独特の優しさがある唐辛子の辛さをさらに引き出してくれます。辛ラーメンは煮込むラーメンなので、こっちのほうがさらに簡単です。ざく切りにしたホールトマトのトマト1個を加えるだけであとは規定通りの作り方をして一緒に煮込むだけです。万能ネギの小口切りを、それもかなりこまかめに切ったのをまわりに散らしてまん中に煎りゴマをひねって(とはつまり、親指と人差し指で摘んで精一杯の握力、指力? で潰しながら散らして)みました。これってもしかして鍋にすることもできるかも。考えてみます。

紹介するならに旬にしろと穴熊先生につねづね言われているのですが、我慢できないほどここのところずっとわたしの旬でありつづけている大根おろしを使った料理を紹介します。まずはレシピから。

「大根おろしのっけ納豆チャーハン&大根のお吸い物」の作り方(1〜2人分)
ご飯 1合
大根 小分け売り分(15センチくらい)
 2個
納豆 1パック
 ひとつまみ

ごま油 大さじ 1
黒胡椒 少々
醤油 小さじ 1

 ご飯を普通に炊く。1合だから2人ならちょこっと、1人ならがっつり食べる感じ。チャーハンはいっぱい作って食べると後半が労働めいてくるので2人で1合。そのあいだに大根の3センチ分くらいを輪切りにして皮を剥いてから半分にして厚ぼったい半月みたいなかたちにする。それをさらに1センチの厚さに切る。その三枚を重ねてまな板に置いてに四分の一、八分の一と放射状に切っていって、最終的に十六分の一のイチョウ切りにする。それをちいさめの鍋に入れて水300ccを注ぎ、極々弱火で煮て大根の出汁を取る。かならず水から。時間をかければかけるほど大根の良い出汁がでる。
 残りの大根を粗めの大根おろしにする。チャーハンの上にのせるので、べちゃべちゃさせたくないからいつもよりぐっときつめに、なんならキッチンペーパーに包んで、めいいっぱい絞って水気を取る。このとき出た大根の汁を捨てないで煮ている途中の1の鍋の中に入れる(だから水は400ccじゃなくて300ccなのです)。
 チャーハンを作る。卵2個と納豆1パック、塩ひとつまみをボールの中に入れてかき混ぜておく。炊いたご飯をすぐに入れられるようガスコンロの近くに待機させておく。あとは一気に。フライパンにごま油大さじ1を入れて強火にして、その中心に注ぎ込むように卵納豆を入れる。オムレツみたいにまわりが焼けてまるく盛り上がってきたら(火をつけてからここまでで約30秒)、強火のまま、あくまでも強火のまま卵のまん中にご飯を投入して、木のしゃもじのようなもので切るようにしてご飯や卵に焦げ目を作りながら、混ぜながら何度かフライパンを返して炒める(この間1分、合計1分30秒)。それぞれのお皿にこんもり盛って大根おろしをのせて、黒胡椒を上からがりがりやればチャーハンの完成。醤油をお好みでふって食べてください。
 大根のお吸い物を仕上げる。大根が柔らかくなっていたら一度味見をして、大根の出汁ってこんななの? とびびって、リスペクトしてから塩をちょっとちょっと入れては味見しをくり返しながら大根の出汁の香りと甘み浮き立つポイントというか境目が「あ、ここだ」と感じられるまでゆっくりと、あわてることなく味を調え、火を止めてから香りづけのために醤油小さじ1を加えれば完成。

どっから話そう。このレシピには話したいことがたくさんあります。やっぱりまずは大根おろしの話から。実は大根おろしがこんなにもいろいろ使えて効果絶大なことを知ったのは雑誌の『オレンジページ』で紹介されていた「大根おろし入りのなめこ汁」なのです。早い話がなめこの味噌汁に大根おろしを入れただけなの郷土料理なのですが、あのぬめりのあいまあいまに口に入る大根おろしのしゃきしゃき感とさっぱり感はわたしを大根おろしの虜にするにはじゅうぶん過ぎるものでした。なんというか、料理に緩急がつけられるのです。わかります? こってりとさっぱりを同時に味わえるというか、一種のどころか究極の薬味であることを知ったのです。ご飯にかける納豆の中にもよく入れます。ミョウガの千切りと一緒に混ぜたらそりゃもう最高です。このブログの最初に紹介した「半熟目玉焼きご飯」の上にものせます。いや、これほんとにおいしくて、むかしの日本人がご飯の上に大根おろしをのせて醤油を掛けて食べていたという話がいまでは信じられるどころか、そりゃうまいに決まってる、と思うくらいです。

とにかくまずは味噌汁の中に大根おろしを入れてみてください。おすすめはたくさんあるけど、いくつか書いておくと、ナスとミョウガの(赤だし)味噌汁、納豆としめじの味噌汁、豚汁あたりでしょうか。粗めにおろして汁ごと入れてください。出汁で具を煮て味噌を溶き、味見をしてから大根おろしを入れて、ひと煮立ちしたら完成、というイメージで。煮すぎたらさっぱり感もしゃきしゃき感も消えてしまうので。

もったいないから大根おろしを吸ったときの汁を捨てないでと言っているのではないことは、いま紹介した大根のお吸い物を作って食べてもらえばわかります。大根おろしの辛みは火を通して甘みに変化してもなお残る野菜の香りというか根性があって、それだけでもうじゅうぶん出汁になります。きのこの出汁と同じです。だからかならず水から煮てみてください。びっくりするほど灰汁が出ますよ。それを丁寧に掬っているうちに愛情も湧いてくるというものです。豚汁が、出汁らしい出汁をとらなくてもあんなにうまいのはきっと大根の出汁のせいなのではないかといまではすっかり信じてます。大根おろしの使い方がうまいというかその効用を、効果を誰よりも信じているとわたしが勝手に思うのは「分とく山」の野崎洋光さんですが、彼の「塩ざけのみぞれ煮」を作って=食べてみてください。そしたらぜったい彼がNHKの「ためしてガッテン」で紹介していた「みぞれ豚しゃぶ」を作って=食べてみたくなるはずです。作り方は簡単です。2人で食べるなら、土鍋に水1カップを入れて沸いたら大根おろしを大根半本分摺って入れて蓋をしてひと煮立ちしたら白ネギの小口切りを投入して豚バラ肉の薄切りでしゃぶしゃぶするだけです(ひとり鍋のときは水100ccに大根四分の一分にしてください)。肉で大根おろしとネギをを一緒に巻いてポン酢につけて食べる究極のシンプル鍋というわけです(シメはご飯でもうどんでもなくて蕎麦です!)。大根の中に含まれる酵素が肉をやわらかくしてくれるので、あっというまに食べてしまいますよ。ダイエット食としてもおすすめです。あ、いま思いついた。今度味噌ラーメンに入れてみよう! ホウレンソウと豚と一緒に食べたらおいしそう。もしかしたら辛ラーメンに入れてもおいしいかもしれない。明日のアレンジはトマトの代わりに大根おろしだ!