Naked Cafe

横田創(小説家)

2007-01-01から1年間の記事一覧

死に化粧

いま、エロさ、エロい、という言葉が好きです。それは、目に見えないものを見る、という言葉と同じで、書けばすなわち嘘になります。忘れたい、と言うことで、言うことの中で、忘れられないなにかのように。正直、わたしの小説のことはよくわかりません。で…

いまは夜である

まみの背中のほうからぐるりと光を投げかけてくる灯台のあかりが夜の雲を照らしていた。まみは夜空で、弁天橋で、江の島ビュータワーで、いま抜け出してきたばかりの民宿だった。ビールを買ったコンビニの前でたむろしていたBボーイたちも、彼らの車も、信…

熱量だけがそこにある

10月25日発売の『ユリイカ11月号 特集*ドストエフスキー』のアンケート「永遠のドストエフスキー」に文章を寄せています。アンケート、といっても、もはやエセー、論考並の分量を掲載していただきました。ユリイカ2007年11月号 特集=ドストエフスキー…

ちいさいビル

すばる 2007年 11月号 [雑誌]出版社/メーカー: 集英社発売日: 2007/10/06メディア: 雑誌 クリック: 1回この商品を含むブログ (2件) を見る10月5日発売の『すばる 11月号』に、新しい小説を発表しました。どこから話せばいいのかわからないほど、直接/…

キリンは首の長い動物である?

言いかえると、尺度によって測られるべきものが、吟味に堪ええない場合には、その吟味の尺度がかわるのである。吟味は知の吟味であるだけでなく、尺度の吟味でもあるわけである。(G.W.F.ヘーゲル『精神現象学』緒論 訳・樫山欽四郎) キリンは首の長い動物…

死を耐え、死のうちで自らを維持するもの

意味という言葉に、わたしの知る限り、もっとも積極的な意味を与えたヘーゲル論は、ジャン=リュック・ナンシーの『ヘーゲル 否定的なものの不安』である。 なにがこうして「存在なるもの」──存在そのものの固有──であるかといえば、それは、意味へと生成す…

朝よりもっと早い朝

気づけばいつもなにかを待っている。たぶんそれは文体[style]と呼ばれるもので、そのときどきの、いまのわたしのすべてであり、その"いま"を除くすべてのわたしの解放のとき。ゆえにその"いま"だけは救われない。文字通り"救いようがない"。現実的なもの、…