Naked Cafe

横田創(小説家)

2009-01-01から1年間の記事一覧

君に届け

それはもちろんtwitterで、いま自分が思ったことを、ぱ、とその場でつぶやければいいと思う。それが一番いいと思う。などとこの場で、つまりはブログで、ぱ、とこんなことを書くことができるわたしが言うことではないかもしれないけど、あくまでもそれは、で…

その他のすべてのもの

国民経済学、すなわち富についてのこの科学は、同時に諦めの、窮乏の、節約の科学であり、そして実際にそれは、きれいな空気とか肉体的運動とかへの欲求さえも、人間に節約させるところにまで達している。驚くべき産業[勤勉]の科学は、同時に禁欲の科学で…

模倣の受難者

ひろき葉は樹にひるがへり光りつつかくろひ[隠ろひ]につつしづ心なけれ 茂吉 この歌を読みながら、ときに小さな声で口ずさみながら、わたしはこの歌を幾度も写生してきた。「イメージしてきた」と書いたほうが分かりやすいのだろうが、どうだろう、それで…

つねにしてすでに命は

わたしたちは、生きている限り、つねにしてすでに命に脅迫されている。この「つねにしてすでに」という副詞をわたしが使うようになってすでにひさしいが、としか言いようがないところにこの副詞の強度はある。「わたしたちは、生きている限り、命に脅迫され…

神と見紛うばかりの

ユリイカ2009年10月臨時増刊号 総特集=ペ・ドゥナ 『空気人形』を生きて作者:是枝 裕和,山下 敦弘,ペ・ドゥナ,宇野 常寛,佐々木 敦青土社Amazon10月13日発売の『ユリイカ(総特集*ペ・ドゥナ『空気人形』 を生きて)』に掲載されたエセーで、主にポン・…

他人の国

選挙という嫌な季節がやってきた。政治家の口からポピュリズムという言葉を聞くたびわたしは片腹痛くなる。ちゃんちゃらおかしい。ポピュリズムにのっとってない政治があるなら見せて欲しいと思う。それは選挙によって選ぶのではない政治家たちの政治で、い…

意識の自然学 ……原宿・千駄木・代々木上原

『すばる 8月号』に〈すばる散歩部〉という企画で「原宿・千駄木・代々木上原 意識の自然学」と名づけたエセーを書きました。公園、絵本、料理、哲学、詩の5章からなっています。これがいまのわたしの生活の、そして仕事の5大要素なのかな、とも思います…

鶏肉のシシカバブー ……クミンパウダーのすすめ

鶏肉が好きです。このあいだもテレビでやっていた芸能人がオススメするグルメな逸品みたいな番組で、決勝に残った三品は焼き肉、マグロのトロの巻物、サーロインのステーキで、ああ、やっぱり、いざとなったらひとは(というか、昨今の日本人は)牛肉やマグ…

魚介のマリネサラダ ……自家製ドレッシングのすすめ

さすがにわざとというわけではないけど、うちの冷蔵庫は高さ八十センチほどの、それはそれはちいさいもので、置き場がないからというわけではないけど、市販のドレッシングは買いません。その場で作って、使い切ります。気分と食材に合わせて組み合わせるこ…

要するに、馬鹿なのである ……小説のまなざし

なにかを見て思い出すのでも、思い出したいなにかがあるのでもなく、ただ「思い出す」という欲望だけが先に作動している。だから小説にとっては、すべての言葉がなつかしい。I Guess Everything Reminds You of Something=なにを見てもなにかを思い出す。こ…

大根おろしのっけ納豆チャーハン ……大根おろしがやばめ

きょうのひとり昼ご飯は「簡単チリトマト・ヌードル」を辛ラーメンで作りました。トマトの酸味が韓国料理独特の優しさがある唐辛子の辛さをさらに引き出してくれます。辛ラーメンは煮込むラーメンなので、こっちのほうがさらに簡単です。ざく切りにしたホー…

自分をエディットする男

丘の上のパンク -時代をエディットする男、藤原ヒロシ半生記作者: 川勝正幸,藤原ヒロシ出版社/メーカー: 小学館発売日: 2009/02/26メディア: 単行本購入: 10人 クリック: 51回この商品を含むブログ (34件) を見る『新潮 6月号』に『丘の上のパンク 時代をエ…

無頭鰯、ふたたび

文学2009 (文学選集)作者: 日本文藝家協会出版社/メーカー: 講談社発売日: 2009/04/29メディア: 単行本 クリック: 25回この商品を含むブログ (2件) を見る短編のアンソロジーに「無頭鰯」が再録されました。雑誌で読み逃した方はぜひこの機会に(などと言う…

海南チキンライス ……蒸し煮、蒸し茹でのすすめ

カレーも鍋も味噌汁も煮魚も、煮汁をたくさん入れすぎていたことにわたしが気づいたのは、高山なおみさんのレシピを読むようになってからなのですが、それはもう劇的に料理の仕方が、味が、おいしさが変わりました。一度おもいきって煮汁の量を見直すことを…

愛することは怒ることである

わたしのような愛し方をすることだけが愛することだとは思わないが、自分なりの愛し方が、いくら考えても見いだせないときわたしはどうしようもなく暗い気持ちになる。どのような愛し方であれそれがキリスト教の隣人愛と呼ばれるもの以上のものでも以下のも…

キャベツのステーキ……野菜炒めの問題と解決

隣りの晩ご飯的なテレビ番組を見ると、かならずと言ってもいいほど登場するキャベツの「野菜炒め」。それを見るたびいつからこんないかにもおいしくなさそうな料理が日本の食卓の定番になってしまったのか考えさせられます。わたしがその全体の指導者なら、…

簡単チリトマトヌードル ……トマト缶のすすめ

すぐにでも作れるものから紹介したいのもあるけど、インスタントのものであっても、ちょっとアレンジを加えるだけでこんなにもおいしく、たのしくなるコツというかノリみたいなものについて書きたいのでひきつづき、ひとりご飯を紹介します。インスタントの…

半熟目玉焼き丼 ……とにかく、半熟がやばめ

仕事がら、昼間家にひとりでいることが多いのだけど、おなかがすいた、けどあまり料理に時間をかけたくないときはご飯を炊いて「半熟目玉焼きご飯」にします。穴熊の休日の日はふたりでブランチみたいに食べたりもします。ポイントは黄身が半熟で、ちょっと…

最後の詩

生活について考えることがほかのなににも増しておもしろいのは、水を抜いて水槽の掃除をするみたいに一度なしにするというか、リセットしてから改良したり、工夫をこらしたりすることができないからだと思います。すでにしてつねに始まってしまっているわた…

意志と自然の極北

わたしたち人間は意志する。意志しない人間など「人間」と呼ぶに値しないと言われるほどに意志する。つまり意志は人間にとって人間であることのあかしであり根拠である。当たり前だが、意志は自動的ではないし自然に準ずるものでもない。むしろそれに立ち向…

パンと友だち

新潮 2009年 04月号 [雑誌]出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2009/03/07メディア: 雑誌 クリック: 2回この商品を含むブログ (6件) を見る 「ほら見てごらん、風が吹いて、いま落ち葉がひらひら落ちてきただろ。きみもあんなふうに、夜はベッドの上に、落ちて…

声の永遠回帰

ずっとむかしから、早逝したミュージシャンや伝説のバンドについて語るのも語られるのが苦手で、なぜかというと、正直、好きなミュージシャンやバンドについて語るひとたちのノリについていけなかったからで、けどそれは、なにもバンドに限った話でないこと…

イグアナの娘

女子にとって、この世界はつねに戦場であるがゆえに、いきおいどうしたって女子の文学は自然主義文学になる。だけど二葉亭四迷の言うところの「有の儘に、だらだらと、牛の涎のやうに書く」ような、ユーモアのない、単なる自己表現であってはならない、これ…