Naked Cafe

横田創(小説家)

2010-01-01から1年間の記事一覧

ただなかで、その傍らで

ユリイカ2011年1月号 特集=ジャン・ジュネ “悪”の光源・生誕一〇〇年記念特集青土社Amazon『ユリイカ1月号 特集*ジャン・ジュネ "悪"の光源・生誕一〇〇年記念特集』にエセーを発表しました。どんな読書もそうであるように、ジュネとわたしの関係も私的で…

新しい時間

鏡を割っても割っても、小さな破片のなかに空が映っている。巣のないツバメ、もちろん聞きおぼえのない女の叫び、今シャッターを閉めたのか開けたのか、朝なのか夕方なのか、姿の見えない救急車は病人を迎えに行くところなのか搬送するところなのか。モンマ…

埋葬

埋葬 (想像力の文学)作者:横田 創早川書房Amazon あたしが死んだことを受け止めてくれるなら、あたしのことを思い出さない日は一日だってないままあたしのことを忘れてくれると思う。植物が日の光に向かって葉をひろげるように、あたしのことを思い出せば思…

富岡多恵子初期短編

群像 2010年 12月号 [雑誌]出版社/メーカー: 講談社発売日: 2010/11/06メディア: 雑誌購入: 1人 クリック: 20回この商品を含むブログ (12件) を見る11月7日発売の『群像 12月号』のコラム「私のベスト3」に「富岡多恵子初期短編」と題したエセーを発表…

体の畑

なんか最近、畑のような感覚で、自分の体のことを考えています。体内環境、とでもいいますか。ビタミン剤やゴマのセサミンのカプセルみたいなサプリメントが体にいいと信じているひとは、一度それを畑に撒いてみるといいと思います。かならずや無駄だと実感…

新刊

本日、ただいま、入稿しました。予定通りに行けば、11月25日に、早川書房から新刊が出ます。はじめて書き下ろした小説です。タイトルだけでもお知らせしようかと思ったのですが、やはり本の姿というか顔である装丁とともにお知らせしたいと思います。(→…

きみをも私をも超越したこの贈り物

わたしたちは、経験でないものまで経験することができる。これはなにより精神分析学によるところが多い発見であり実践でした。そしてその解明であり治療でした。それはもちろん、いまなおつづく旅である*1。ストレスというなんともゆるい言葉に一手に担われ…

わたしの目の前に、まるで本のように 表象論3

一人の死者を注意深く眺めていると奇妙な現象が生じる。体に生命がないことが、体そのものの完全な不在と等しくなる。というよりも、体がどんどん後ずさっていくのだ。近づいたつもりなのにどうしても触れない。これは死体をただ見つめている場合のことだ。…

表象のパラドクス 表象論2

たとえば、西瓜。いまごろ日本各地の畑で、あんなにおおきなものが、あんなにたくさんごろごろしていると、見る者が声をあげずにおれないほどまるまるとふとった西瓜。濃い緑の中にかなり大胆なタッチで黒い亀裂模様を走らせた西瓜。叩くと厚い皮が太鼓の膜…

あらためてこうして  表象論1

あらためてこうして眺めてみると、あるいは聞いてみると違ったように見えたり聞こえたりするのは日常的によく起きることです。やはりわたしは料理のことを思い出します。ふだん自分でつくっているわたしは、よく自分でもつくるし、何度も食べたことがある料…

光のなかにしっかりおさまっている

夜と灯りと (新潮クレスト・ブックス)作者: クレメンスマイヤー,Clemens Meyer,杵渕博樹出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2010/03メディア: 単行本購入: 3人 クリック: 47回この商品を含むブログ (15件) を見る5月6日発売の『すばる 6月号』に、クレメンス…

未開の映画

ユリイカ2010年5月号 特集=ポン・ジュノ 『ほえる犬は噛まない』『グエムル』そして『母なる証明』・・・韓国映画の若き旗手のすべて作者: ポン・ジュノ,黒沢清,斎藤環,渡邉大輔,東浩紀,飛浩隆出版社/メーカー: 青土社発売日: 2010/04/26メディア: ムック購…

石の娘

先月、フットサルの練習にお呼ばれして、二十年ぶりにサッカーボールを蹴って、走って、ターンして、何度も転んで、膝を痛めた。わたしは膝を痛めた。わたしはわたしの膝を痛めた。痛めた膝はわたしのもので、ひどくわたしは痛みを感じていた。わたしの膝だ…

自分はどんな傷を負っているのか。いつどこで、どんな傷を負わされているのか。見つめる。それはなにも作家の仕事だけでなく、人間にだけ課せられたものでもなく、すべてのものに負わされている使命だと思う。わたしにとって、それはなにかを言うことでした…

塩鶏じゃが ……翻訳料理のすすめ

塩鶏じゃが:田口 成子レシピブログを本家である当ブログと統合することにしました(レシピブログにアップした記事もこちらへ順次移動させる予定ですので、料理ブログとしてお使いになりたいときはカテゴリー機能を活用してください)。レシピだけを独立させ…