Naked Cafe

横田創(小説家)

2008-01-01から1年間の記事一覧

彼女の余白

余白はいつでも、わたしたちが思うより、ずっとひろい。余白というと、ノートの罫線のない部分のイメージがあるけど、それで言うなら余白の本当は、ノートも含めたテーブルの上にこそある。そしてテーブルが置かれたカフェの上に、カフェのある土地も含めた…

嘘でも言うこと、誰かを思い出すこと

嘘でも言うことが大事なことを知らないひとは、いかに「言う」ことが難しいか、困難なのかを知らないひとだと思う。それを言うなら、本当のことを言うことがいかに難しいか、その困難の中にこそ「言う」ことへの抵抗やの困難があるのでは? そう思うひともい…

緊張について(もしくは、欲望の節度について)

小学生のころ、いま思うと、どうかしてたのではないかと思うくらい、やたらとわたしは緊張していた。わたしだけではない。小学生は、とにかくやたらと緊張をする。そこに時代も個体の差もないように思われる。わたしが「緊張」と聞いて、まず最初に思い出す…

転調のためらい

たとえばクラシックと呼ばれるジャンルのピアノ曲のワルツだったとして、トン、タンタン、トン、タンタン、とベースを刻む左手が、何小節目かの「トン」で転調するのをためらうかのように、あるいは次のコードを踏むのを躊躇したかのように粘るその瞬間がわ…

お葬式

11月27日発売の『ユリイカ 特集*母と娘の物語 母/娘という呪い』に短編小説を書きました。こうして書くと、やはり、ほんと、怖いというか、おどろおどろしいですね。なのにいかにも問題がありそうには見えないところが問題というか、いままでほとんど…

これは、誰の、風景なのか

三人称で書くこと、書かれていることの意味。それはきっと、それを書きながら、そして読みながら、いま見ているこの風景は誰の風景なのか、誰の、どんな視線がわたしたちにこれを見せているのか、見ることを可能にしているのか、それを考えながら書くこと、…

女子の鎮魂歌

たくさんの女子の敗北を見てきた。どれひとつとして痛切で、こころの中が血の海にならないものはないくらい悲痛で、悔しくて、わたしは片時も忘れることができない。そしていまなお、これをこうして書いているいまも、女子は女子である自己と格闘している。…

時代の余白

「本当の自分」と呼ばれるものは、だいたいがだいたいにおいて、いや、すべてにおいて、どんな自分であっても暴力的なもので、この言葉には、自己の暴力を自己の外に向け変えることをよしとする神話(被害者意識)が働いている。同じように、男である自分/…

もてなしであり、こころであるもの

現代アートを積極的に見るほうではないが、ふと気づくと内藤礼の作品だけは見ていることに気づく。最初に見たのはテレビの特集で、いまも直島にある「きんざ」。より正確に言えば、古民家の壁と地面のわずかな隙間から水平に(!)差し込む光によって/にお…

落としもの

新潮 2008年 11月号 [雑誌]新潮社Amazon10月7日発売の『新潮 11月号』に短編小説を発表しました。正直、書いたというより、なにかに見入られ、呆然と眺めていたというのが実感で、わたしはまだこの小説を紹介する言葉を見つけられずにいます。だからこ…

見えるものを見ること、描くこと、思考すること

あるのではない。実はそこにないかもしれない。けど、見える。というより、あるのかないのかもはや問う必要も結論づける理由もないところに見えるものはあり、それは存在とは別の仕方で存在する/しない。つまり、見られる/見える。当たり前のことだが、わ…

なにも持たないあなたへ

なにも持たなくていい、ではなくて、なにも持たないのがいい。そう思うというより、どこかでこっそり感じているかもしれないあなたへ。たとえば、知識がなくてもいい、考えることはできる、とはよく言われることですが、知識がないほうがよく考えられるとは…

オッパーラ!!!

今週の土曜日に、夜から早朝にかけて江の島でパーティをします。下のタイムテーブルを見てもわかるように、ふだんいろいろなパーティ、いろいろなクラブでプレイしている豪華なDJたちの大集合となっておりますので、まちがいなくたのしい夜になることでし…

大人の仕事

8月27日発売の『ユリイカ 特集*太宰治/坂口安吾 〜無頼派たちの"戦後"』に「大人の仕事」と題したエセーを書きました。いまなにかを書こうと思えば、また同じことを書いてしまいそうなので書きませんが、わたしは本当に安吾の文学が好きです。このエセ…

「関係性」という言葉について

いつから気になりだしたのか、もう定かでないが、どうしてもわたしは「関係性」という言葉が気になる。論文やエセーや小説で目にするたび、本当なら「関係」と言うべきところを「関係性」と言っているだけのような気がしてならない。もしそうだとしたら、な…

厳正に処罰すべき? 死を無駄にしないためにも?

昨今頻発している通り魔のような無差別殺人事件に対して識者が「(犯人を)厳正に処罰すべきであるのは当然として」もしくは遺族が「(被害者の)死を無駄にしないためにも」と発言するとき、そこにはどんな力が、無意識が働いているのだろうか。わたしがい…

一概には言えない

『二十歳の微熱』や『ハッシュ!』の監督として知られる橋口亮輔・監督の『ぐるりのこと。』がいま渋谷や銀座で、首都圏各地で公開中ですが、彼の作品の中で唯一観ていなかった『渚のシンドバッド』をDVDで観てから、シネマライズで観てきました。やはり…

残念な乳首

群像 2008年 08月号 [雑誌]出版社/メーカー: 講談社発売日: 2008/07/07メディア: 雑誌購入: 1人 クリック: 19回この商品を含むブログ (4件) を見る むかしからわたしは、名前がそのままあだ名になる妙子みたいな女の子に憧れていた。だからみんなが「ももち…

世界同時無銭飲食の旅

すばる 2008年 08月号 [雑誌]出版社/メーカー: 集英社発売日: 2008/07/05メディア: 雑誌購入: 1人 クリック: 13回この商品を含むブログ (3件) を見る7月5日発売の『すばる 8月号』に、新しい小説を発表しました。中二の女の子と、二十二歳のいとこのおね…

いや、……

あらたに別の推薦文を書こうと思ったのだけど、下の(チラシやネット用の)推薦文を書いてから神里雄大(という名の演出家/作家)と会うたび、下に書いたような思いを強くするばかりなので、そのまま転載することにします。今度の公演で彼がなにをするか、…

天気予報のように

言葉の直接性。わたしはそれを「風景としての感情」と名づけた認識の場において/によって、意識のあり方をあらわすものとして考えてきました。言い換えれば、風景としての感情に結びついたとき、言葉はわたしたちにとって直接的なものになるのです。いまも…

子供の映画

なにも母や父が特別なのではない。家族というものはやはり大切で、自我の形成に決定的な影響を及ぼすのでもない。ただそれは連続している。どこからどこまでが自己で自己でないのか、まだ確立していないのが子供なのではなく、とりあえず母や父などよゆうで…

死者の数ではなく

ひとひとり死ねばそれでもうじゅうぶんである。あとは何人死のうが死ぬまいが、違いをわたしは知ることができない。巨大な自然災害を前にして、わたしたちはその圧倒的な数字に驚かされるばかりだけど、だからこそ、とわたしは思う、わたしは0と1しか数字…

無頭鰯

群像 2008年 06月号 [雑誌]出版社/メーカー: 講談社発売日: 2008/05/07メディア: 雑誌 クリック: 14回この商品を含むブログ (23件) を見る 誰にも言えないことは本当にあった。そのひとにだったら言える、けどそのひと以外には誰にも言えないそのひとにすら…

四人のマウマ

「パラレルワールド」という言葉が、その概念が、物理学の量子論のレヴェルでも思弁的な哲学のレヴェルでも文学のレヴェルでもわたしは嫌いで、なのになぜこんなにも多くのひとを魅了し、そういう思考をせずにおれなくさせるのか、ずっと考えてきました。も…

雨の音

雨が降るのは、なにも空からだけではないことが、きょうのような雨の音を聴いているとわかります。隣りの一戸建ての屋根からも、いまわたしがいるマンションの屋上からも雨は降ります。ベランダの手摺りにたまって、わずかな傾斜を察知して、移動した先で出…

囁くような関係

この二年、いや、三年、それまでのわたしでは考えられないほどたくさんのアニメーションを観てきた。テレビ版を一秒も観たことがなかったわたしが映画館で「エヴァンゲリオン〈序〉」を観た感想は、おそらく賛否両論あるであろう、テレビ版とはくらべられな…

詩=私

端的に言って、詩とはなにか、という問いになるのかならないのかはなはだ心もとない問いは、わたしたちをドツボにはめます。ならやめておけばいいのに、ほかの多くのドツボがそうであるように、ふと気づくとわたしたちはまた「詩とはなにか」を語り始めてい…

詩=人

現代詩手帖 2008年 04月号 [雑誌]思潮社Amazon『(世界記録)』の翻訳論の中で展開されていたわたしの詩論を最初の最初に批判してくれたのは山城むつみさんでした。二度読んだ、のひとことにも驚かされましたが(その後、彼の読書にとって「二度」は当たり前…

究極の一日

今月はいろいろ観るものがあって、この週末は四日連続で舞台を観に行っているとMちゃんが言っていました。そういう意味では今度の週末の29〜30日は、ただでも年度末である上に桜も満開になると予測されているので、池袋や新宿、渋谷の駅のホームはいまに…