Naked Cafe

横田創(小説家)

レル[Rer]には街路がない

 パートナーの死後、内側に緩衝材がついた封筒で文庫本が一冊届けられた。ネットで本を買うことが多かったパートナーの本がパートナーの死後に届けられたのはこれが初めてではなかった。印鑑を押して受け取り、つっかけていたサンダルを後ろに残し、上がりかまちに足を掛けながら引き裂くようにして開けた封筒の中から、青と緑の綺麗な文庫本が現れた。
 世界の誕生日。アーシュラ・K・ル=グウィン。ハヤカワ文庫。金色の冠をした褐色の肌の少女が森の中からこっちを見ている。